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ハッダ遺跡の概要
ハッダの位置と現在の状況
アフガニスタンの古代仏教都市遺跡ハッダは、パキスタンに隣接するアフガニスタンの東部ナンガルハール州のジャララバード市の南方約10キロメートル(資料によっては8キロメートル)に位置しています。ハッダは地理的にも特徴的な場所にあります。アフガニスタン内戦中、ソ連軍との戦闘でほぼ完全に破壊されたと言われており、現在は廃墟となっています。
ハッダは、ガンダーラ美術の遺跡としても知られています。ガンダーラ地域では2世紀ごろに初めて石彫による仏像が造られたことが知られており、この都市からは、ギリシャ風の仏教彫刻やガンダーラ美術の遺物が多数発掘されています。これらの作品は約23,000点に及び、その彫刻の技術的洗練度から、ギリシャ人の集団が関与していた可能性が示唆されています。
ハッダの歴史とアフガニスタン内戦による破壊は、この古代仏教遺跡の保存と修復の必要性を示しています。過去の文化遺産の価値を理解し、これらの遺跡を後世に伝えるためには、保存活動への取り組みが欠かせません。
ハッダの歴史
ハッダは、2~7世紀のナガラハル国の醯羅(けいら)城のあったところと言われています。その歴史は不明ながら,玄奘三蔵の記録によると,城中には釈迦の頭頂骨,眼球をまつったストゥーパのある2階建ての高楼があり,多くの仏教徒の巡礼の目的地となり,ハッダの名もサンスクリットのhiḍḍa(骨、ドクロ)に由来したといわれています。
ハッダ遺跡の調査・発掘の状況
1923~28年に掛けてフランス考古使節団により大寺院跡七ヶ所が発掘されました。それらの寺院跡は現在のハッダの南から西にひろがるレキ岩台地に約2キロメートルの範囲に集中しており,平地には塔院や僧房が建てられ、丘上に塔院,丘崖に僧房窟を開いたものなどが確認されています。
フランス考古使節団の調査では多数出土したスタッコ像に重点をおいてハッダ芸術を喧伝したので,ガンダーラやタキシラのスタッコ像と共にインド・アフガン派という流派も提唱されました。しかし,ハッダではガンダーラと同じく片岩製仏像も多数製作されていました。
また1966~78年にアフガン考古研究所が発掘したタパ・ショトル寺院跡では,塔院の祠堂群や僧房の壁の窪んだ部分の壁龕(へきがん)で塑像の優品が出土し,ハッダの仏教芸術の複雑な様相が明らかになりました。
仏教遺跡の詳細
ハッダからはギリシャ風の仏教彫刻やガンダーラ美術の遺物が多数発掘されています。これらの作品は約23,000点に及び、後期ヘレニズム様式が長く保存されています。このため、ギリシャ人の集団が関与していた可能性が示唆されています。
ハッダ出土の仏像と仏教美術
ハッダの仏教遺跡からは多くの仏像が出土しています。これらの仏像にはギリシャとローマ美術の要素が見られます。ギリシャ的な建築様式や文化が取り入れられており、ガンダーラ美術の影響が窺えます。
仏像の形と製作方法
ハッダの仏像は石彫りで制作されています。これらの仏像の制作にはギリシャの彫刻技法や表現方法が取り入れられており、繊細な彫刻が施されています。
ギリシャとローマ美術の影響
ガンダーラ美術の特徴と影響
ガンダーラ美術は、アフガニスタンのハッダ(Hadda)というガンダーラ美術の遺跡と深い関連をもっています。ハッダはギリシャ風の仏教芸術が栄えていた場所であり、その芸術にはガンダーラ美術の影響が強く見られます。
ガンダーラ美術は、ギリシャやローマの彫刻技法や表現方法が仏教の彫像に取り入れられた独自の美術様式です。これは、ガンダーラ地域がかつてアレクサンドロス大王によって征服され、ギリシャ文化が浸透していたからです。
ハッダの仏像には、ギリシャとローマ美術の要素が見受けられます。例えば、ハッダの仏像の体の比例や立体感は、ギリシャ彫刻の影響を受けています。さらに、仏像のポーズや表情にもギリシャ的な要素が見られます。
ハッダの仏像は、ガンダーラ美術がギリシャやローマの美術技術を取り入れたことを象徴しています。これらの美術作品は、ギリシャとローマ美術の影響を受けながらも、仏教の思想や精神性を表現している点で独自の魅力を持っています。
ハッダ遺跡の現状と保存の必要性
ハッダ遺跡の現状
ハッダはアフガニスタンのナンガルハール州に位置し、古代ガンダーラ美術の遺跡として知られています。ハッダは数世紀にわたって隆盛を極め、多くの仏教寺院や彫刻が築かれました。しかし、長い間の戦乱や略奪、天候の影響により、現在ではその大部分が崩壊し廃墟となっています。
かつて、ハッダはアフガニスタンでも重要な聖地の1つであり、人々はここを巡礼し、仏教の教えに触れる機会を得ました。しかし、内戦や武力紛争の影響により、多くの建物や仏像は破壊され、美術品も盗まれてしまいました。
現在、ハッダはその一部が復元されており、一部の仏像や壁画が保護されていますが、まだまだ大きな修復が必要です。しかしながら、戦争や政治的な混乱のために修復作業が中断されることもあり、修復のための資金や熟練した専門家の不足も課題となっています。
ハッダ遺跡の保存・修復の必要性とその取り組み
ハッダ遺跡の保存・修復の必要性は非常に高いです。ハッダはアフガニスタンの豊かな歴史と文化の一部であり、その存在が失われることは遺憾であり、人類の喪失でもあります。
そのため、ハッダ遺跡の保存・修復には国内外の支援が必要とされています。アフガニスタン政府や国際機関、NGOなどが協力し、ハッダの復元作業に取り組んでいます。修復作業では、遺跡内の構造物や仏像の安定化、保存状態の評価と保護対策、修復技術の継承などが行われています。
また、ハッダ遺跡は観光地としての価値も持っており、その価値を最大限に活かすための取り組みも行われています。観光業の振興や観光客の安全確保なども含め、ハッダを持続可能な観光地として発展させるための努力がなされています。
ハッダ遺跡の保存・修復の取り組みはまだまだ途上段階ですが、多くの関係者や愛好家が力を合わせ、ハッダの魅力と価値を後世に伝えるべく努力を続けています。
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