ペシャワール会がハンセン病の治療を再開

アフガニスタンで長年医療支援、飲料用井戸の確保、用水路建設及び農業インフラの整備に尽力してきた福岡市のNGO団体「ペシャワール会」は、15年ぶりに活動の原点であるハンセン病治療を再開することを決定しました。

 

「ペシャワール会」の現地代表であった故中村哲医師は、学生時代にハンセン病治療に携わることを決め、実際に大学卒業後フィリピンでハンセン病治療に従事しています。その後、パキスタンへの登山隊に帯同した際に多くのハンセン病患者を目にしたものの十分な治療薬を持ち合わせていなかったために治療が出来なったことを悔やみ、1984年中村医師はハンセン病患者の治療のために初めてパキスタンのペシャワールを訪れました。当時、ハンセン病に対する偏見や差別は根強く、患者たちは社会から隔離され、適切な医療を受けることも困難でした。中村医師はそのような状況に心を痛め、現地での診療所の運営や訪問診療を通じて、ハンセン病患者に対する包括的な医療を提供し始めました。

 

やがて活動はパキスタンからアフガニスタンへと広がり、ハンセン病だけでなく、栄養失調や感染症、戦争による負傷など多岐にわたる疾患への対応へと発展していきました。しかし、中村医師は生涯を通じて、ハンセン病に苦しむ人々を「見捨てられた人々」として重視し続け、彼らへの医療提供を活動の柱の一つとして位置づけていました。彼の姿勢は、「病気そのもの以上に、病気を理由に人が人として扱われないことに対する怒り」として、多くの支援者の共感を呼びました。

 

「ペシャワール会」の活動再開は、アフガニスタンの保健省やナンガルハル州政府がハンセン病医療への協力を同会に要請し現地スタッフと協議し診療再開を決定したものです。「ペシャワール会」は、スタッフの確保や医療体制のい整備を進め年内の治療再開を目指す予定です。ナンガルハル州政府が診療所を提供する予定であり同州及びアフガニスタン東部州で活動の予定です。