ゾロアスター教は、紀元前1000年頃、古代ペルシャ(現在のイラン)において宗教改革者ゾロアスター(ザラスシュトラ)によって創始された宗教であり、世界最古級の啓示宗教とされる。その教義は、宇宙を善なる神アフラ・マズダーと悪なる霊アンラ・マンユとの対立という二元論に基づいており、人間の自由意志による善悪の選択が重視される。ゾロアスター教は火を清浄の象徴とみなし、火を絶やさずに灯す「拝火教」とも呼ばれているが、実際には火そのものを崇拝するのではなく、それを神の純粋さの象徴として尊んでいる。
教義の中核には、「善き思い、善き言葉、善き行い(フヴァシュタ・マナ、フヴァシュタ・ヴァチャ、フヴァシュタ・シャス)」という倫理的指針があり、信者は生前の行いによって死後の運命が決まるとされる。また、最後の審判の概念や終末論的な世界観も存在し、これらの思想は後のユダヤ教、キリスト教、イスラム教に影響を与えたと考えられている。
ゾロアスター教はアケメネス朝ペルシャ帝国の国教となり、サーサーン朝時代にはさらに制度化されたが、7世紀のイスラム勢力の進出と共に衰退し、現在ではイランやインドに少数派として残っている(インドでは「パールシー」と呼ばれる)。このようにゾロアスター教は古代から中世にかけて西アジアの宗教的枠組みに多大な影響を与え、後の啓示宗教の成立にも重要な思想的基盤を提供した宗教である。
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