天部とは、仏教において仏や菩薩を補佐し、仏法を守護する神々の総称であり、多くはインドのヒンドゥー教やバラモン教に由来する神々が仏教に取り入れられた存在です。これらの神々は「護法善神」とも呼ばれ、仏教の教えや信仰を守る役割を担っています。寺院の守護や信者の加護を目的として、仏像の周囲に配置されることも多く、その姿はしばしば勇ましく、武器を持ち、怒りの表情を浮かべていることが特徴です。これは、悪を退け、仏法を侵すものに立ち向かう強さを象徴しています。
天部にはさまざまな神が存在し、たとえば天界の主とされる帝釈天は、インド神話のインドラ神を起源とし、仏教においては仏法の守護者として重要な位置を占めています。毘沙門天は武神であり、同時に財福をもたらす神としても信仰され、日本では七福神の一員にも数えられています。さらに、大黒天は元来シヴァ神の化身であり、福徳や財運を授ける神として知られ、弁才天は音楽や学問、財運を司る女神であり、その起源はヒンドゥー教のサラスヴァティにあります。阿修羅はもともと戦いを好む存在として知られますが、仏教では苦悩を抱えた守護神としても描かれ、また風神や雷神のような自然現象を象徴する神々も天部に取り入れられています。
このように、天部は仏教の中でも特に現世利益との結びつきが強く、災難除け、勝運、商売繁盛などを願う庶民の信仰の対象となってきました。彼らの姿や性格は多様でありながら、共通して仏法を守り、信仰を実生活に結びつける役割を果たしているのです。
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