ムハッラム

ムハッラムはイスラム暦の最初の月であり、イスラム教における四つの聖なる月の一つとして、深い宗教的意義と精神的厳粛さを持っています。この月は「禁じられた」という意味を持ち、戦いや流血が禁じられた月として、古代アラブ社会においても神聖視されてきました。イスラム教の教えにおいても、この月は特に敬虔に過ごすことが推奨され、罪を避け善行に励むべき期間とされています。

 

ムハッラム月の中でも特に重要なのが10日にあたる「アシュラ」の日であり、この日を中心に、特にシーア派の信徒たちは悲しみと追悼の感情を込めた儀式を行います。これは、預言者ムハンマドの孫でありシーア派にとって重要な宗教的指導者であるイマーム・フサインが、680年にカルバラーの戦いで殉教した出来事を記念するためです。シーア派の人々はこの月を通じてフサインの犠牲を追悼し、喪に服しながら、行進や詩の朗誦、胸を叩く哀悼の儀式を行い、その精神を今に伝えようとします。

 

一方、スンニ派のイスラム教徒にとってもムハッラムは尊い月とされており、特にアシュラの日には、預言者ムーサー(モーセ)が神の助けによってファラオの圧政からイスラエルの民を救ったという出来事を記念し、任意の断食を行う信者もいます。この断食は宗教的義務ではありませんが、非常に功徳のある行いとされ、信仰心を新たにする機会と見なされています。

 

このようにムハッラムは、イスラム教徒にとって新年の始まりであると同時に、宗教的内省と敬虔な実践が求められる月であり、特に歴史的な殉教の記憶が強く共有される期間として、深い宗教的・精神的意味を持っています。