アシュラ(ʿĀshūrāʾ)は、イスラム暦の1月(ムハッラム月)の10日にあたる重要な宗教行事であり、イスラム教徒にとって深い歴史的・宗教的意義を持つ日です。この日をめぐる意味合いは、スンニ派とシーア派で異なります。
スンニ派においては、アシュラはムーサー(モーセ)がイスラエルの民を率いて紅海を渡り、ファラオの軍勢から救われた出来事を記念する日とされています。預言者ムハンマドもこの日を断食して敬意を表したとされ、現在でもスンニ派の一部の人々はこの日、またはその前後の日に断食を行います。この断食は義務ではありませんが、宗教的功徳があるとされています。4
一方で、シーア派にとってアシュラは極めて悲しみに満ちた日であり、預言者ムハンマドの孫であるイマーム・フサインが、680年のカルバラーの戦いでウマイヤ朝の軍勢によって殺害された殉教の日として深く記憶されています。シーア派の人々はこの日を追悼の日と位置づけ、フサインの犠牲と正義のための闘いを記念して、喪服を着ての行進や詩の朗誦、胸を叩く儀式(ラトミヤ)、さらには一部の地域では身体を打つなどの過酷な儀式を行うこともあります。また、この出来事を題材とした宗教劇「タアジエ」が上演されることもあり、信仰心と集団的な記憶の共有が強く促される日となっています。
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