コーカソイド

コーカソイドとは、かつて人類を大きく人種区分する際に用いられた分類の一つで、主にヨーロッパ、中東、北アフリカ、南アジアの一部に住む人々を指していました。この語は18世紀の人類学において、ジョハン・フリードリヒ・ブルーメンバッハによって提唱されたもので、ジョージア地方(コーカサス地域)の住民の頭蓋骨形状が「最も美しい」とされたことから「コーカソイド(コーカサス型)」という名称が付けられました。特徴としては、比較的細長い鼻、くっきりとした顔立ち、波状から直毛の髪質、白色から褐色まで幅広い皮膚の色などが挙げられてきました。

 

しかしながら、このような人種分類は現代の人類学や遺伝学の視点からは大きく見直されており、「コーカソイド」や「モンゴロイド」「ネグロイド」といった旧来の区分は、科学的根拠が乏しく、社会的・政治的にも偏見や差別を助長する恐れがあるとして、現在では学術的にはほとんど使用されていません。現代の研究では、人間の多様性は連続的かつ遺伝的混交の結果であり、明確に区切れる「人種」という概念自体が実証的に支持されていないと考えられています。そのため、「コーカソイド」という用語は、現在では主に歴史的文脈や、過去の学説を説明する際に限定的に用いられるにとどまっています。