カイバル峠は、アフガニスタンとパキスタンの国境地帯に位置し、スレイマン山脈の一部をなす重要な山岳峠です。この峠は、パキスタンのペシャーワルとアフガニスタンのジャララバードを結ぶ通路であり、古くから南アジアと中央アジアを結ぶ交通と交易の要衝とされてきました。カイバル峠は紀元前からシルクロードの一部として商人や巡礼者が通行する道となっており、また歴史上多くの征服者たちもこの峠を越えてインド亜大陸に進軍しました。
たとえば、紀元前4世紀にはアレクサンドロス大王がこの峠を経てインドに侵攻したとされており、また13世紀にはモンゴルのフレグ軍が、そして16世紀にはムガル帝国の創始者バーブルがこの峠を通ってインドを征服しました。近代に入っても、イギリスのインド統治時代には英印軍がたびたびこの地域で軍事行動を展開し、特にアフガン戦争ではたびたび激戦が繰り広げられました。現代においても、カイバル峠は軍事的要所であると同時に、パキスタンとアフガニスタンの貿易・物流における主要なルートとなっており、両国の政治的・安全保障上の課題とも密接に関係しています。このようにカイバル峠は、地理的な接点であるとともに、歴史の舞台でもあり続けてきた場所なのです。
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