ロヤ・ジルガ

ロヤ・ジルガ(Loya Jirga)は、アフガニスタンにおいて部族長、宗教指導者、政治家、地域の有力者などが一堂に会して国家の重要事項を協議・決定する伝統的な大集会であり、アフガン社会において民主的要素を内包する意思決定の手段として長い歴史を持っています。「ロヤ」は「大きな」、「ジルガ」は「会議」を意味し、その起源はパシュトゥーン人の習慣法に基づく合議制にあり、近代以前から部族間の争いの調停や新たな支配者の承認などに用いられてきました。

 

近代国家としてのアフガニスタンにおいて、ロヤ・ジルガは王位継承や憲法の制定といった国家的課題に関して、形式的ではなく実質的な影響力を持って招集されてきました。特に20世紀においては、1923年にアマーヌッラー・ハーンが近代憲法の承認を求めて開いたロヤ・ジルガや、2003年にカルザイ暫定政権下で新憲法の採択を議論したロヤ・ジルガが有名です。これらの場では、多数の代表が参加し、国の基本的な方向性について活発な議論が交わされました。

 

ロヤ・ジルガは制度的には一時的な立法・諮問機関であり、必ずしも継続的な国会のように機能するわけではありませんが、伝統的正当性と民主的手続きが交差する場として、アフガニスタン特有の政治文化の中で重要な役割を果たしてきました。特に中央政府の権威が限定され、地域ごとの自立性が強いアフガニスタンにおいて、ロヤ・ジルガは国家的合意を形成するための重要な手段とされてきたのです。