ミナレットとは、イスラム建築のモスクに付属する細長い塔のことであり、主に礼拝の呼びかけ(アザーン)を行うための施設として設けられました。もともとはムアッジンと呼ばれる人がこの塔に登って礼拝の時刻を大声で周囲に知らせていましたが、現代ではスピーカーが使われることが一般的となっており、ミナレット自体は宗教的・象徴的な存在として機能しています。
建築的には、ミナレットは遠くからでも目立つように高く築かれており、上部にはバルコニーのような構造が設けられ、そこからアザーンが唱えられる仕組みになっています。形状や装飾は地域や時代によって大きく異なり、例えばオスマン帝国時代のトルコでは非常に細長く高いミナレットが好まれ、一つのモスクに複数のミナレットが設置されることもあります。一方で、モロッコや北アフリカの地域ではより太くて四角い塔型が一般的であり、イランや中央アジアでは装飾タイルを多用した円柱形のミナレットが特徴的です。
ミナレットは単なる実用的な構造物にとどまらず、モスクの存在を視覚的に際立たせる役割も担っており、都市や村におけるイスラム共同体の中心としての象徴的な意味を持ちます。そのため、ミナレットはイスラム世界において宗教的なアイデンティティを表す重要な建築要素の一つとされています。
|
|