印欧祖語

印欧祖語とは、現在ヨーロッパから南アジアにかけて広がる多くの言語の共通の起源とされる、仮定上の言語です。これは、英語、フランス語、ドイツ語、ギリシャ語、ロシア語、ヒンディー語、ペルシア語など、いわゆるインド・ヨーロッパ語族に属する諸言語の祖先にあたると考えられています。印欧祖語自体は文献として残っておらず、現存する言語の語彙や文法を比較し、それらの共通点から19世紀以降の言語学者たちによって再構築されてきた理論的な言語です。

 

この言語は、およそ紀元前4500年から2500年の間にユーラシア大陸のどこか、たとえば現在のウクライナからカスピ海北部にかけてのステップ地帯(いわゆる「クルガン仮説」による)で話されていたと推定されており、そこから人々の移動や文化の広がりとともにさまざまな地域へと伝わり、やがて個別の言語へと分化していったと考えられています。印欧祖語の研究は、言語の起源だけでなく、古代の人類の移動や文化的接触を探る手がかりとして、今なお注目されています。