三蔵

「三蔵」とは、仏教の経典を三つの分類に分けたもので、「経蔵(きょうぞう)」「律蔵(りつぞう)」「論蔵(ろんぞう)」の総称です。まず「経蔵」は、仏陀の説いた教え、すなわち説法や教義に関する内容を収めたもので、仏教の根本的な思想や信仰の指針が記されています。次に「律蔵」は、出家者である僧侶たちの生活規範や戒律をまとめたもので、仏教教団の秩序維持や修行の正しさを保つための規定が含まれています。そして「論蔵」は、経や律の教えを解釈・整理・論述したもので、仏教の教義を体系的に理解し、他宗教との論争や議論に用いられることもあります。これら三つの蔵は、それぞれ独立しつつも相互に関連しながら、仏教の教理全体を構成している重要な要素です。
 

「玄奘三蔵」あるいは「三蔵法師」という称号の「三蔵」は、単に名前の一部ではなく、「経蔵・律蔵・論蔵」の三つの教典に通じ、深く理解し修めた高僧であることを意味します。つまり「三蔵」とは、三蔵の学問を修得した学識豊かな僧侶への尊称であり、玄奘はその学徳によって「三蔵法師」と呼ばれるようになりました。

 

この称号は、特に中国や日本では高名な僧に対して用いられ、単に仏典を読むだけでなく、翻訳・注釈・伝播にも関わる人物であることを示しています。玄奘はインドにまで渡って原典を学び、中国に仏典を持ち帰り、漢訳した功績からも、「三蔵」の名にふさわしい人物とされています。