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ティムール朝の再興を果たしたバーブル
バーブルのティムール朝からムガール帝国へ

ムガール帝国の建国者であるバーブルは、ティムール朝の血統を受け継ぐ人物です。バーブルは、ティムールから5代目にあたる子孫で分裂していたティムール帝国のサマルカンド政権のフェルガナの君主の子として生まれました。母はモンゴル帝国のチンギス・カーンの次男チャガタイの血筋で、モグーリスタン・ハン国の王女でした。つまり、バーブルはアジアの二人の覇者、ティムールとチンギス・カーンの血を引いていることになります。民族としてはモンゴルの血筋を引くチュルク系民族であり、チュルク語の他ペルシア語、アラビア語にも精通していました。彼が創始した帝国も、ティムール帝国の後継国家です。「ムガール帝国」の「ムガール」は、「モンゴル」が訛ったものです。
中央アジアからの追放とアフガニスタンへの移動
ティムール朝滅亡後、バーブルは故郷である中央アジアのフェルガナを失い、幾度もの挫折を経験しました。バーブルは各地を転戦する中で、新たな拠点を求め、現在のアフガニスタン東部へ移動しました。この移動は、彼の人生における重要な転機となります。中央アジアでの拠点を失ったバーブルにとって、カーブルを中心としたアフガニスタン地域は地理的にも戦略的にも新たなスタートを切る場所となりました。
カーブル拠点の確立と準備期間
アフガニスタンに到着したバーブルは、1510年にカーブルを重要な拠点として確立します。カーブルは交易の要所であり、その支配は周辺地域への影響力を強めるものでした。この地でバーブルは軍事力を再編し、戦術を熟練させながら、より強固な基盤を築きます。また、この段階は彼のムガール帝国建設に向けた準備期間でもありました。地元の民族や部族との融和を進める中で、彼は徐々に周囲の支持を集めることに成功します。
イスラムとモンゴルの血統の融合
バーブルの血筋は、ティムール朝の祖であるティムールとモンゴル帝国のチンギス・ハンに連なっていました。このイスラム文化とモンゴルの伝統が融合した出自は、後にムガール帝国の独自性を形作る重要な要素となります。ムガール帝国の名は”モンゴル”に由来しますが、それは単なる血統ではなく、文化や価値観の融合を強調するものでした。バーブルはこの複雑な背景を携えつつ、後にムガール帝国を世界史に名を刻む偉大な帝国へと昇華させる基盤を築いたのです。
決定的な転機となった第一次パーニーパットの戦い
ロディー朝との対立と戦いの背景

ムガール帝国の建国者であるバーブルがインド進出を目指した背景には、当時のインドを支配していたロディー朝との政治的、軍事的な対立がありました。ティムール朝滅亡後、中央アジアからアフガニスタン東部のカーブルに拠点を移したバーブルは、その地で勢力を立て直しつつ、ロディー朝の支配する北インドへの進出を狙っていました。一方、ロディー朝は内部の権力闘争や統治の不安定さに悩まされており、バーブルに対抗する力が十分とは言えませんでした。この状況がのちに第一次パーニーパットの戦いへとつながるのです。
戦術とオスマン帝国からの鉄砲技術
バーブルが第一次パーニーパットの戦いで用いた戦術は、彼の勝利を決定的なものとする重要な要素でした。特に注目すべきなのは、オスマン帝国からもたらされた鉄砲技術の導入です。バーブルは、鉄砲を効果的に活用するため、ヨーロッパや中央アジアで一般的だった「トゥーグ」戦術を採用しました。この戦術では、鉄砲や大砲を守るための防御陣地を築き、敵軍を誘い込んで打撃を与える戦略が用いられました。ロディー朝軍は伝統的な騎兵中心の戦法に依存していたため、バーブルの近代的な軍事戦術に対抗することができず、大敗を喫することとなりました。
1526年の勝利とインドへの進出
第一次パーニーパットの戦いは1526年4月21日に行われ、バーブルは約12,000の兵力で推定100,000のロディー朝軍を打ち破るという圧倒的な勝利を収めました。この戦いは、バーブルにとってインド進出を実現するための重要な一歩となり、ムガール帝国の成立へとつながっていきます。ロディー朝の敗北はインド北部の権力構造を根本から変えるきっかけとなり、以後のインド史に多大な影響を与えました。
デリー制圧と帝国の成立
バーブルが第一次パーニーパットの戦いの後に目指したのは、デリーの完全な支配でした。デリーの制圧に成功したことで、ムガール帝国が正式に成立し、デリーはその首都として機能し始めました。ティムール朝の正当な後継者を自認するバーブルは、自らの支配をティムールの栄光の延長線上に位置付けるとともに、新たなイスラーム国家としてインドを統合する使命感を持っていました。デリー周辺を支配地域とするという当初の公約を果たしたバーブルの存在は、以降のムガール帝国の安定と拡大の基盤を築く出発点となりました。
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