目次
パシュトゥン人の概要
パシュトゥン人の定義
パシュトゥン人は、アフガニスタンとパキスタンに居住するイラン系民族であり、アフガニスタン内で最も人口の多い民族です。パシュトゥン人は、パフトゥーン、パターン(族)、アフガンなどの名前でも知られています。
居住地
パシュトゥン人は、アフガニスタン中部・南部およびパキスタン北西部の辺境部族自治区に居住しており、各地域には数百万人が暮らしています。彼らはアフガニスタンの人口の約42~45%程度、パキスタンの人口の約11~15%を占めています。
また、パシュトゥン人はアラブ首長国連邦、アメリカ合衆国、イラン、イギリス、ドイツ、カナダ、インドなど他の国々にも居住していますが、その数は比較的少なくなっています。
パシュトゥン人は自らの部族や地域に強く帰属感を持っており、彼らの文化と伝統はその地域や部族の特徴を反映しています。
パシュトゥン人の遺伝的系統
パシュトゥン人はアフガニスタンとパキスタンに居住するイラン系民族であり、独自の遺伝的背景を持っています。
遺伝的背景
パシュトゥン人の遺伝的背景は、中央アジアや中東の異なる民族集団との交流や混血によって形成されています。彼らの先祖は、アフリカ、ヨーロッパ、アジアのさまざまな地域からの移住や征服者によってもたらされた遺伝情報を共有しています。
遺伝子研究によると、パシュトゥン人の遺伝子は特に中央アジアの遺伝的系統であるユーラシアイレヴァンシュリ系統と関連しています。この系統は、中央アジアの古代遺跡で見つかった遺骨から推定され、パシュトゥン人の祖先が約3000年前にイランから中央アジアに移住したことを示しています。
遺伝的差異
パシュトゥン人の遺伝的差異は地域や部族によって異なる傾向があります。アフガニスタンやパキスタンのさまざまな地域に住むパシュトゥン人の間で、遺伝的な類似性や違いが見られます。
一部の研究では、パシュトゥン人の一部の部族が他の部族と比較して遺伝的に異なることが示されています。これは、地理的な隔離や結婚の慣習、歴史的な出来事による遺伝的な隔たりが原因とされています。
パシュトゥン人の遺伝的差異は、自然環境や生活環境の違いにも関連している可能性があります。例えば、山岳地帯に住むパシュトゥン人と平地に住むパシュトゥン人では、遺伝子プールが異なる可能性があります。
遺伝的差異はパシュトゥン人の特徴や身体的な違いにも現れる可能性がありますが、詳細な研究が必要です。
パシュトゥン人の遺伝的系統に関する研究はまだ進行中であり、今後の研究によってより詳細な情報が明らかになることが期待されます。
パシュトゥン人の文化
パシュトゥン人の文化は、彼らの言語や伝統的な慣習によって特徴付けられています。
言語
パシュトゥン人は、インド・ヨーロッパ語族イラン語派東イラン語群のパシュトゥー語と呼ばれる言語を話します。この言語はアフガニスタンの公用語で国民の半数が使用していると言われています。また、パキスタンのパシュトゥン人居住地域などの一部地域で主に使用されており、数百万人の人々が話す母国語となっています。
パシュトゥン人の伝統的慣習
パシュトゥン人には、彼ら独自の伝統的な慣習が存在します。例えば、族長と呼ばれる指導者が部族の政治や法律を決定する役割を担っています。また、男子は誇りを重んじ、家族や部族の名誉を守ることが重要視されます。
その慣習は、パシュトゥンワーリー(パシュトゥンワリ)と呼ばれており、イスラム法と並ぶ拘束力の有る慣習法で掟に近いものです。
パシュトゥン人の部族社会
パシュトゥン人の社会は部族制度に基づいており世界最大の部族社会を形成していると言われており、家族や部族の絆が非常に強いです。このため、家族や部族のメンバーとの連帯感や協力関係が重視されます。
アフガニスタンのパシュトゥン人には氏(支)族を含めると600以上のの部族集団が有ると言われ、それらはさらに部族連合を構成しています。中でも二大部族連合のキルザイ部族連合とドゥッラーニ部族連合は巨大部族連合でアフガニスタンにおいて大きな影響力を持っています。
さらに、ゲストをもてなすことや家族の結び付きを大切にすることも、パシュトゥン人の文化において重要な要素です。ゲストは称号や敬意をもって迎えられ、心地よいおもてなしを受けることが期待されています。
また、婚姻もパシュトゥン人の文化において重要なイベントです。結婚式は大規模で華やかで、家族や友人が集まって祝福の言葉を贈ります。
パシュトゥン人の文化は、彼らの歴史や民族性に根ざしており、彼らの生活に大きな影響を与えています。
パシュトゥン人の宗教
パシュトゥン人の宗教はイスラム教スンナ派です。彼らはイスラム教の教えを信じ、信仰を大切にしています。イスラム教は彼らの生活の中心であり、日常の行動や習慣にも大きな影響を与えています。
パシュトゥン人はイスラム教の教えに基づき、1日に5回の礼拝を行います。彼らは礼拝の時間を守り、モスクに集まって共に祈ります。また、彼らは断食月のラマダンを厳守し、日の出から日没まで飲食を控えます。これは彼らにとって重要な宗教的な行事であり、信仰心を深める機会となっています。
さらに、パシュトゥン人はイスラム教の教えに従い、慈善活動や善行を積極的に行います。彼らは貧困救済や孤児院の支援など、社会的な責任を果たすために尽力しています。彼らの信仰は、人々を思いやりのある行動に導き、共同体の結束を強める役割を果たしています。
イスラム教がパシュトゥン人の生活に与える影響は大きく、彼らの文化や習慣にも反映されています。彼らは宗教の教えを重んじ、イスラム教の価値観に従って生きることを大切にしています。
パシュトゥン人とタリバン
パシュトゥン人とタリバンは、アフガニスタンの社会・政治において密接な関係を持つ存在です。
タリバンの主要構成民族
タリバンは主にパシュトゥン人から構成されています。パシュトゥン人はアフガニスタンの人口の約42~45%を占めるイラン系民族であり、アフガニスタン内で最も多数派を形成しています。そのため、タリバンはパシュトゥン人を中心とした組織となっています。
タリバン内の位置付け
パシュトゥン人はアフガニスタンの伝統的な部族社会を重視し、強い紐帯で結ばれた部族の構造を持っています。タリバンもこの部族の文化や習慣を尊重し、パシュトゥン人の部族社会を基盤としています。そのため、タリバンはパシュトゥン人の間で支持を得ており、タリバンの指導層にはパシュトゥン人が多く存在しています。
アフガニスタンの歴史や民族構成を理解する上で、パシュトゥン人とタリバンの関係は重要な要素です。パシュトゥン人の伝統や文化、宗教に加えて、タリバンの主要な構成民族としての存在を考えることが必要です。
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